不安や悩みの根本に親子関係が?精神分析・心理学に学ぶ処方箋

精神分析・心理学に学ぶ処方箋

「普通の人」にとっては何気ないはずの、日常的な場面。

通勤や通学、友達とのお喋り、オシャレをする、旅行に行く、合コンや女子会に参加する(もしくはその誘いを断るとき)…
あなたが強いストレス不安を感じているとすれば、その原因はどこにあるのでしょうか。

人間関係で悩みが尽きない
主体的に行動できない
決断を先送りにしてしまう
どんな誘いに対しても「嫌」だと言えない

いま若い女性の間で、そのような人が増えています。「生きづらさ」の原因はどこにあるのか。

今回はその「病巣」を見定め、問題を解決するための糸口を一緒に探っていきましょう。

1.歪んだ親子関係と「愛情不足」の悪影響

1-1.一生を左右する幼少期の「記憶」

人は誰しも、人間関係の基本を「親子関係」から学びます。

科学的に見ると、幼年期~少年期にかけてニューロン(脳細胞のネットワーク)が形成され、その構造が人の一生を左右することが分っています。

特に「人見知り」の傾向や「共感する能力」などは早い段階でインプットされ、生涯に渡って大きく変化することはありません。

幼少期、親にたっぷりと甘えて「愛されて育った人」は、良好な人間関係を構築する能力に長けています。

一方、親から十分な愛情を注がれることなく、「愛情不足」の家庭に育った人は、

自分に「自信」を持てない

親密な人間関係を築くことができない(ちょっとした人間関係に疲れてしまう)

誰かを傷つけることを恐れるあまり、「八方美人」的な振る舞いが多い

といった特徴が見られます。

自分以外の「他者」に対して、「親とは違う」と頭で分ってはいても、自然に振舞うことができない…。

幼少期に親から叱られたり責められたりした「記憶」が、現在もその人に「恐怖」を感じさせているのです。これを「感情的記憶」といいます。

1-2.「愛情不足」が招く問題点

感情的記憶を自力で払拭することは困難です。幼少期の親子関係に起因する「嫌な思い出」は、その人の性格全般に暗い影を落とします。

例えば、

自分が誰かを不機嫌にさせてしまうのではないか…
傷つけてしまうのではないか…

そんな「加害恐怖」が、人間関係を阻害します。

加害恐怖に怯える人は、「会話が下手」で「一人でいることを好む」傾向にあります。

「相手を不機嫌にさせてはいけない」という意識が強過ぎて、気楽に話すことができない…
自然にお喋りもできないから、一人でいる方が楽。

心の底では友達や恋人を作りたいと切実に願っていても、誰かと一緒にいると「疲れる」から、「一人でいることを好む」わけですね。

ですから、(ごく限られた)親しい人間に対してはとても饒舌で、関係に苦痛を感じることもない… まるで「別人」のように振舞う方も少なくないようです。

問題なのは、その関係に至るまで、

普通の人より時間がかかる
100人中99人の「他人」とは打ち解けることができない
または、親しい人間が一人もいない

そんな場合です。

加害恐怖が強過ぎるため、人間関係=社会性が満たされることなく、鬱屈した感情を抱え込んでしまう…
その感情が、さらなる「対人スキルの低下」を招く。

この悪循環を断ち切らなくてはなりません。

2.良好に見える親子関係にも落とし穴が

親子関係の落とし穴

2-1.愛情で子どもをコントロールする親

私の親は大丈夫!しっかり愛されて育ったし、「しつけ」もきっちりしていた… そのように考える方も多いことでしょう。

この問題の「難しさ」は、まさに「そこ」にあります。自分では「愛されていた」つもりでも、「愛情でコントロール」されていたのではないか?

まずはそのように「疑ってみる」ことから始めましょう。

気に入ることをすれば「愛」を与え、気に入らないことをすれば「愛」を引っ込める…
このような親のもたらす「歪(いびつ)な愛の形」は、目に見えない形で子を束縛します。

確かに周囲の人から見ると、親子関係は良好に見えるかもしれません。一見したところは「親の言うことを素直に聞くいい子」に育つからです。

しかし、こうした愛の「歪さ」は、将来的にその子の性格や対人能力をも歪めてしまいます。

本来、愛とは「無条件に与えられるもの」でなくてはなりません。「報酬」のように与えたり、取り上げたりするものではないのです。

親が子に対して行う愛情の「出し惜しみ」は、子どもから自信を奪います。

とは、「あなたはそのままでいい」、「あなたには価値がある」という「メッセージ」に他なりません。

本来ならそのメッセージが子どもに「安心感」をもたらし、「自信」を育みます。

しかし、一緒にいて最も安心できるはずの親から、十分な安心感を得られないとどうなるでしょうか。

「誰といても安心できない」、「自分に自信を持てない」人間になってしまう(少なくともそうした傾向が強まる)のは間違いありません。

2-2.「放任」も「過保護」も何らかの「偏り」を生む

明らかに「愛情不足」の家庭に育った場合も、密かに「愛情でコントロールされていた」場合も、問題の「根っこ」は同じです。

親子関係が歪んでいたから、現在も人間関係から「生き甲斐」や「友情」、「愛情」といった滋養を引き出せない。

それどころか逆に、人間関係に疲弊し、悩みや不安ばかりが募る…そんな方も多いはずです。

親から「劣等感」を植えつけられ、他人と「普通」に付き合うことができない。

言い換えれば、幼少期の「感情的記憶」が、現在の人間関係(人間観)に悪影響を及ぼしているわけですね。

ここで注意したいのは、必ずしも親に「悪意」があったわけではない、という事実です。

親から見れば、愛情を引っ込めるのは「しつけ」の一環であり、「子どものため」に「教育」しているつもりなのです。

事実、周囲からは「立派な親」として評価され、子ども自身からも「良い親」として「尊敬」されているケースは珍しくないようです。

一般に親の「放任主義」は愛情の不足を招きやすく、「過保護」な親は子どもを愛情でコントロールする傾向があります。

標準的な教育方針は両者の中間に位置するわけですが、何らかの「偏り」が生じたとき、それが将来的に子どもの「悩み」として表出するケースが多いようです。

3.解決策は?「変化」を求めるあなたへ

変化を求めるあなたへ

3-1.悩みや不安を和らげる「気付き」の効用

「三つ子の魂百まで」という言葉があるように、私たちは親子関係(の悪影響)から完全に自由になることはできません。

幼少期から培われた価値観や人間観は、根本の部分では「一生変わらない」と指摘する研究者も多いようです。

では、親から残された「負の遺産」は、一生抱え込むしかないのでしょうか。

人間関係に疲れ、自信を持てない自分、加害恐怖に怯える自分は、それを「個性」として引き受ける他ないのでしょうか。

もし「救い」のようなものがあるとすれば、それは「気付き」です。
今の自分が直面している悩み、不安の多くは、親子関係に起因しているものだと「気付く」こと。

問題の根っこを見据えて、「そうだったのか」と理解する。そのとき「腑に落ちる」感覚を得られたのなら…
あなたは問題の解決に向けて一歩踏み出したことになります。

勘違いしないでいただきたいのは、ご両親を「恨む」必要はない、ということ。

「自分は親の教育でこのような人間になったのだ」という「事実」そのものを、自覚し、理解しさえすれば良いのです。

また、あなたが親を愛せないとしても、「普通」の親子関係を築けないとしても、それは仕方のないこと。
自分を責める必要もありません。

3-2.今までにない視点から問題の原因を探る

カウンセリング」と呼ばれるものの多くは、「気付き」を目的に行われます。

例えば、幼少期の「トラウマ」や様々な「恐怖症」は、原因を理解する(気付く)ことで改善されるケースが少なくありません。

人は誰しも「正体の分らない不安や恐怖」を過剰に忌避します(幽霊が怖いのもそのためです)。

しかし、問題の成り立ち(メカニズム)を把握すれば、不安感や恐怖感は幾分か和らぐもの。

闇夜では幽霊に見えたものが、白日の下ではただの「かかし」だった…なんていうのはよくある話です。

「どうすれば○○という不安を解消できるのか」と考えるのではなく、まずは「なぜ自分は○○に不安を抱くのか?」と考えてみること。

その「答え」に気付いたとき、私たちは新しい視座を手に入れ、それまでとは異なる角度から「悩み」を見据えられるようになります。

3-3.マイナスの感情を発散するための方法論

もしもあなたが今、何らかの「悩み」に直面しているのなら、親子関係を分析してみることから始めましょう。

世間には「毒親」と呼ばれるような人間が、確かに存在します。悩みの過半は「自分のせい」ではなく「親のせい」。そのように開き直ってもOK。

マイナスの感情が鬱積しているのであれば、親と話し合う機会を持つのも良いでしょう(それ以前に「腑に落ちる」感覚が得られたなら、必ずしも話し合う必要はありません)。

そのとき大切なのは、親を責めたり恨み言を口にしたりするのではなく、単に自分の「見解」を伝えるにとどめること。
「あなたのせいで、私は○○な人間になった」と明言します。

親御さんによっては、「そんなのは甘えだ」として言葉を退けたり、「お前のためにやった」と愛情やしつけを「口実」にして「反論」します。

あるいは、「親の気持ちが分らないのか」と叱責されることもあるでしょう。

しかし、あなたはあくまで冷静に、「それはあなた(たち)の見解で、私の見解とは異なる」という「事実」だけを伝えます。

結果、あなたはマイナスの感情を発散できるかもしれません。親子関係が変化し、新たな局面を迎えるかもしれません。

もし、親子関係が疎遠(もしくは険悪)になったとしても、おそらくそれは一時的なもの。本当に「愛情」のある親なら、その変化も「込み」であなたを受け入れるはずです。

4.最後に

最後に

親の「束縛」は、残念ながら成人になっても続くことが少なくありません。

特に母娘関係においてはその傾向が強く、「娘を手放さない親」、「いつまでも子ども扱いして劣等感を植えつける親」、「自分の理想を押し付ける親」など、枚挙に暇がないほど。

「親のことを悪く言えない」日本だからこそ、問題は見えにくく、深刻なのです。

私たちが最終的に目指すべきゴールは、親の影響から「自由になる」こと。
「恨む」ことや「責めること」ではありません。
そのための方法は人それぞれ。「話し合う」ことに抵抗を覚えるなら、

同居をやめて一人暮らしを始める(物理的に距離を置く)

メールや電話の機会を減らす(心理的に距離を置く)

友人や恋人が持つ「多様な価値観」に触れる

結婚、出産などを経て新しい「家族」を作る

という形で打開策を模索するのもおすすめ。

大切なのは現状を「そのまま」にせず、変化させること。

長い時間を要するかもしれませんが、その先には必ず今までよりも豊かな人生が待っているはずです。

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